小田原方に引き上げ線を備え、千代田線の直通列車等が折り返しを行う小田急の向ヶ丘遊園駅。
ここから先は完全な複線区間に戻るため、新百合ヶ丘までは輸送上のボトルネックにもなっています。

そんな向ヶ丘遊園駅ですが、小田原方から急行線に進入する場合、ポイントを通過する関係で強めの速度制限を受けています。
昔はこのような配線ではありませんでしたが、なぜ現在のようになったのでしょうか。

優等列車が減速する小田原方の配線

登戸から向ヶ丘遊園にかけては、上り線のみが緩行線と急行線に分かれ、3線となる小田急の中でも特殊な区間です。
このような事情から、新宿方の下り線はポイントによって待避線に分岐する一方、上り線はそのまま緩行線と急行線に繋がるため、スムーズに走ることができるようになっています。

複線区間に戻る小田原方については、引き上げ線が上下線間に設けられている事情から、上り線の配線に特徴がある状態です。
どのような配線なのかといえば、本線と引き上げ線がそれぞれ緩行線と急行線に繋がり、それをシーサスクロッシングで渡ることができるというもので、そこだけを見ればどちらも本線のように見えなくもありません。

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小田原方の上り線はこのようになっており、3000形は本線からそのまま向ヶ丘遊園駅の4番ホームに入り、緩行線を進んでいくこととなります。
急行線となる3番ホームには、引き上げ線がそのまま繋がるようになっているため、本線からはポイントを渡って進入する必要があり、速度制限によって45km/h程度での通過を余儀なくされます。
考えられているように見える配線ですが、急行線に入る通過列車が速度制限を受けるため、その点では少々苦しい面もあるといえるでしょう。

現在の配線となった理由

小田原線が開業した当時から存在する向ヶ丘遊園駅ですが、長い歴史の中で何度か配線変更をしています。
開業時から列車の折り返しを行っていましたが、昔は引き上げ線が設けられておらず、向ヶ丘遊園行きの下り列車は駅を出た先で停車し、本線上で折り返す運行形態でした。

列車が長くなるのに合わせて、向ヶ丘遊園駅の配線は何度か変更されたようですが、かつては4番ホームの外側に貨物側線があり、保線車両等が停まっていました。
ホームが10両の停車に対応するようになった段階では、3番ホームに対してスムーズに進入できる配線となっており、ややカーブはしながらも高速で通過できる状態でした。

現在の配線になったのは1987年のことで、目的は引き上げ線の有効長を延長するためでした。
その代償として、3番ホームの進入には速度制限がかかることになりましたが、当時は一部を除いたロマンスカーぐらいしか通過列車がなかったことから、そこまで影響はなかったのかもしれません。
通過列車が増えた現代においては、この減速が少々まどろっこしく感じますが、限られた用地で10両に対応した引き上げ線を設けている以上、仕方がないことなのでしょうね。

おわりに

昔はスムーズに進入できる配線だったにもかかわらず、引き上げ線の延長に伴って現在の状態となった向ヶ丘遊園駅。
10両編成が走るようになるとは、開業段階で予想もしていなかったでしょうから、沿線の発展に伴う痛みの部分といえそうです。