小田急から西武に8000形が譲渡されると発表されてから、気付けば8ヶ月が経過しようとしています。
そんな中、譲渡の対象となる可能性が高かった8261Fに動きがあり、ついに小田急線内を飛び出し、西武線内へと運ばれていきました。

8000形の輸送は200kmを超える長旅となりましたが、小田急と西武の線路は直線距離で10kmも離れていない場所さえあるのに、なぜこんなにも遠回りとなるのでしょうか。

小田急から西武に運ばれた8261F

長く休んでいた喜多見検車区から大野総合車両所に運ばれ、その後は海老名検車区に移動していた8261Fですが、2024年5月18日の終電後となる19日の未明、ついに小田急線内から旅立ちました。
海老名検車区からは8000形の8257Fに牽引され、JR東海の御殿場線と線路が繋がる新松田駅に向かい、JR貨物の機関車を待つこととなります。

新松田駅からはEF65の2074号機が牽引を担当し、小田急線内から御殿場線内へと入り、終点の沼津駅まで運ばれました。
沼津駅では比較的長い停車時間となり、かつて20000形(RSE)や371系が終点としていた地にて、束の間の休憩時間となります。

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沼津駅を出発した列車は、東海道本線を都心方面に向かって走行し、貨物線等を経由しつつ川崎貨物駅まで運ばれます。
私は大船駅の近くで撮影することとし、西武に活躍の場を移す8261Fを記録してきました。

川崎貨物駅で夜を明かした8261Fは、西武に向かうため翌日に再び動き出し、新鶴見信号場、梶ヶ谷貨物ターミナル駅を経由し、武蔵野線内を新秋津駅まで運ばれます。
JR貨物のお仕事はここまでで、最後は西武線内を牽引する101系の263Fに引き継がれ、小手指車両基地まで小田急と西武の車両による連結が早速実現、西武線内へと到着しました。

輸送はなぜ遠回りになってしまうのか

小田急と西武の位置関係を確認すると、小田急永山駅から国分寺駅までは直線距離で10kmにも満たず、意外と近いことが分かります。
今回の輸送は総距離で200kmを超えていますが、なぜこんなにも遠回りが必要なのでしょうか。

鉄道に詳しい方には説明不要だと思いますが、他社と線路が繋がっている場所というのは限られます。
小田急の場合、車両の搬出入は御殿場線と繋がる連絡線を介して行われますが、西武の場合は武蔵野線と繋がる連絡線を使うため、それぞれを結ぶことができるルートを選択する必要があるのです。
車両の受け渡しを行う場所の関係で、今回は200kmを超えるような大移動となってしまいましたが、こればかりは仕方がありません。

そこで気になるのが、他の輸送手段はなかったのかという点です。
車両の輸送においては、道路を運ぶ陸送という手段もありますが、1両単位での輸送となってしまうことや、効率がよいとはいえない面があり、線路で輸送できる車両をあえてそうする理由はなく、遠回りでも線路上を走らせるほうが都合がよいといえます。

小田急から西武といえば、東京メトロの線路を介しても繋がっており、千代田線と有楽町線を経由すれば、池袋線に入ることはできなくもありません。
しかし、地下鉄線内を貨物として車両を輸送することはなく、8000形は車両のサイズ面でも入線ができないため、これは夢物語ということになります。

おわりに

それほど離れてはいない小田急と西武の線路ですが、車両を運ぶとなれば遠回りが必要で、8000形は長い距離を走行することとなりました。
西武線内での運行開始まではまだ時間がかかるものと思われますが、新天地での新たな活躍に期待しつつ、その日の訪れを気長に待ちたいと思います。