座席指定制の特急列車として、初めて地下鉄との直通運転を行うようになった小田急のロマンスカー。
登場から現在まで、車両は東京メトロへの乗り入れに対応した60000形(MSE)が使われており、曜日や時間帯に合わせた様々な列車が運行されています。

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そんな千代田線直通のロマンスカーですが、代々木上原には乗務員交代のために停車するものの、客扱いは行っていません。
わざわざ運転停車という対応になっているのは、何が理由なのでしょうか。

客扱いを行わない代々木上原駅

2008年に運行を開始したMSEは、同時に東京メトロの千代田線にも乗り入れを開始しました。
運行開始当初は、不定期ながら有楽町線に入線するベイリゾート号も運転され、MSEは愛称のとおりマルチな活躍を見せることとなります。

千代田線に乗り入れる代表的な列車としては、メトロはこね号やメトロホームウェイ号等があげられ、乗務員の交代が必要なことから、全ての直通列車が代々木上原駅に運転停車をしています。
停車時間は長くないため、小田急と東京メトロの乗務員はすばやく交代し、電車は足早に出発していくのが日常の光景です。

そこで気になるのが、せっかく駅に停まっているのにもかかわらず、客扱いを行わない点です。
停まらなければいけないのであれば、ついでに客扱いをしてもいいように思いますが、運行開始から今日まで一切行われていません。
何か理由があるのだと思いますが、それはどういったことなのでしょうか。

なぜ代々木上原駅では運転停車なのか

小田急と東京メトロが共同使用している代々木上原駅ですが、直通列車は運転士と車掌の交代を行う必要があり、列車は必ず停車する必要があります。
両線は保安装置等も異なるため、停車してそれらを切り替える必要もあるのでしょう。

運転停車のついでに客扱いをしない理由については、停車時間の増大が予想されるため、それぞれの遅れを相手路線に波及させない意図が考えられます。
全席指定制のロマンスカーは、乗客の動きによって多少の遅れが発生することも多いため、折り返し列車が多く設定される代々木上原駅においては、客扱いを避けたいという事情はありそうです。

もう一つの理由としては、営業戦略上の都合が考えられます。
千代田線に直通するロマンスカーは、両線を通して利用することを目的に設定されており、代々木上原駅で客扱いをした場合、前提方針との相違が生まれてしまうのです。

例えば、上り列車で考えられるケースとして、代々木上原駅までロマンスカーに乗車し、千代田線にはそこから普通の列車に乗るという利用方法が可能となります。
千代田線内の特急料金が不要となるため、利用者にとってはちょっとした節約になりますが、東京メトロとしては空いた特急を走らせることにも繋がり、あまりにもデメリットが多いといえるでしょう。

下り列車についてもデメリットがあり、代々木上原駅からロマンスカーに乗りたいという方が多数いた場合、東京メトロ線内から乗りたい方がいたとしても、特急券を購入できないケースが発生します。
上り列車の場合と同様に、代々木上原駅でロマンスカーに乗り換えるという使い方もできてしまうため、客扱いは避けたいのが当然といえます。

おわりに

利便性のためには客扱いをという意見はあるかもしれませんが、それを行ってしまうと直通運転をする意味自体がなくなってしまうため、こればかりは仕方がありません。
地下鉄線内をロマンスカーが走るという取り組みは、このような停車駅の工夫によって実現しているともいえそうですね。