分割併合が可能なロマンスカーとして、1996年に営業運転を開始した小田急30000形(EXE)。
前面展望席の有無等、従来の車両とは設計思想が大きく異なっていたこともあり、登場当時は様々な意見が交わされることとなりました。

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そんなEXEの登場でしたが、車両自体の変化以外にも、列車愛称の変化というその後の流れを生んだ面がありました。

EXEと同時に誕生したスーパーはこね号

老朽化が進んでいた3100形(NSE)を置き換えることを目的として、EXEは1996年に営業運転を開始しました。
小田急で初めて展望席を採用したNSEを置き換える車両は、奇しくもそうではないEXEとなったわけですが、ロマンスカーにおける変化の始まりを象徴するできごとだったといえます。

EXEが営業運転を開始した1996年3月23日のダイヤ改正は、ロマンスカー自体における転換点でもありました。
分割併合が発生するという背景もありましたが、多くのはこね号が町田駅に停車することになったため、新宿から小田原までをノンストップで走る列車をスーパーはこね号、町田に停まる列車をはこね号とします。
特急列車の愛称に「スーパー」を冠するのは、この時期の流行りでもありましたが、ロマンスカーにカタカナを含む愛称が加わった瞬間でもありました。

日常の利用にも目を向け、従来とは違った設計思想で登場したEXEでしたが、観光ニーズが強い列車でも積極的に使用されることとなります。
宣伝等で露出の機会も多くありましたが、車両の変化と運用の変化に乖離があったこともあってか、その後は軌道修正を余儀なくされました。

次々に登場したカタカナの愛称

EXEが登場したからなのか、そのような変化の過程だからEXEが登場したのか、実際の事情は分かりませんが、スーパーはこね号の登場を契機として、ロマンスカーの愛称はカタカナ化が進んでいきます。

まず、EXEが営業運転を開始した2年後の1999年には、ホームウェイ号とサポート号が登場しました。
前者は今も続く通勤客向けの着席列車で、後者はさがみ号とあしがら号をまとめたうえで、停車駅のパターンを増やすことが狙いの列車でした。
どちらもEXEのために登場したような愛称でしたが、ホームウェイ号はそのまま完全に定着するも、サポート号という愛称は不評だったためか、2004年に列車の愛称を行先別に整理することに合わせ、さがみ号を復活させることで消滅しています。

カタカナの愛称が次に増えたタイミングは、60000形(MSE)が営業運転を開始した2008年で、千代田線に乗り入れる列車に「メトロ」の文字を冠したほか、ベイリゾート号という挑戦的な列車も設定されました。
EXEと同じく、日常利用に重きを置いた設計となっているMSEですが、そこに合わせてカタカナの愛称が増えたというのは、やや共通点を感じる部分でもあります。

近年の変化としては、2018年に設定されたモーニングウェイ号があげられるでしょう。
ホームウェイ号と同じく、時間帯によって列車の性格を分かりやすくするための対応ですが、観光向けとしつつも、日常利用の要素をやや強めた70000形(GSE)が同時にデビューしており、これもまた過去との共通点を感じるものとなりました。

おわりに

やや強引に結びつけてしまった面はあるかもしれませんが、ロマンスカーの変化とカタカナの増加には一定の相関があるように思います。
これ以上はなかなか増えない気もしますが、イメージを変えるという面においては、分かりやすい手段なのかもしれませんね。