小田急の小田原線では、下り各駅停車の行先が本厚木行きというのが定番です。
昔は向ヶ丘遊園行きも多く設定されていましたが、東京都区内を走る各駅停車の本数が段階的に減らされた結果、見かける機会は少なくなりました。

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各駅停車では多く走る本厚木行きですが、他の列車種別では事情が大きく異なり、なかなか見る機会がない行先となります。
なぜ他の列車種別では少なく、本厚木行きは各駅停車ばかりなのでしょうか。

各駅停車以外では少ない本厚木行き

全区間を乗り通す方は多くないと思いますが、小田原線の各駅停車といえば、新宿から本厚木の間を行ったり来たりしているイメージではないでしょうか。
伊勢原行き等のように違う行先の列車もありますが、日中を中心に下り列車は多くが本厚木行きとして運転されています。

各駅停車では定番の本厚木行きですが、他の列車種別では事情が異なり、ほとんど見ることができません。
急行と準急では僅かに設定されるのみであり、以下の列車が該当します。

【平日(下り)】
・8時40分着(急行)
・9時58分着(急行)
・21時16分着(準急)
・22時15分着(準急)

【土休日(下り)】
・21時37分着(急行)

【土休日(上り)】
・6時22分着(急行)

このように、数えられる程度しか走っていないことが分かりますが、昔は急行だと1日に1本しかないのが定番だったため、これでも増えたことになります。
一方で、昔は準急でも比較的多く見られましたが、現在は希少な存在へと変わりました。

なぜ各駅停車以外の本厚木行きは少ないのか

各駅停車では沢山走る本厚木行きは、なぜ他の列車種別だと少ないのでしょうか。
その背景には本厚木駅ならではの事情があり、今日まで大きく変わらずに続いてきました。

まず、本厚木駅は小田原線における輸送上の境界となっています。
多くの各駅停車にとって終点であることからも分かるとおり、本厚木駅を境に列車の本数が減少し、急行や快速急行は新松田まで各駅に停まります。
長距離を走ることになる優等列車は、必然的に本厚木以西まで走行することが多くなるため、どうしても本厚木行きは少なくなってしまうのです。

もう一つの理由としては、引き上げ線が1本しかないという事情もあります。
輸送上の境界であることにも関係しますが、各駅停車が本厚木行きとなり、1時間に6本程度が運行されると、10分に1本の割合で折り返しが発生します。
しかし、その間に1本を挟もうとすると5分での折り返しとなってしまい、かなり余裕がない状態となってしまうのです。

多くの列車が8両や10両となっており、乗務員が前後を交代する時間を考えた場合、5分間隔での折り返しは現実的に難しいといえます。
乗務員を交代する段落としを行えば、素早く折り返すことも可能ではありますが、そこまでして各駅停車以外を本厚木行きにする理由はないのでしょう。
本厚木駅で折り返せないため、伊勢原行きとなっているような列車もあり、ダイヤを作るうえでの苦労も感じられますね。

おわりに

優等列車では多くなく、急行等で見かけると違和感さえある本厚木行き。
伝統的に各駅停車以外では少ない列車ですが、この先大きくパターンが変化するようなことはあるのか、そんな想像をしてみるのも面白そうです。