2024年4月1日をもって、小田急のロマンスカーで提供されていた無料Wi-Fiサービスが終了しました。
Wi-Fiは無線LAN規格の一つで、現代ではほぼ同じ意味で使われていますが、一般的にはWi-Fiと呼ばれることが多くなっているように思います。

20180519_04

無料Wi-Fiサービスの終了には様々な意見がありますが、私が感じたのでは時代と環境の変化でした。
ロマンスカーにおける無線LANの歴史について振り返りつつ、その背景を考えてみましょう。

ロマンスカーにおける無線LANサービス

近年のサービス提供から、ロマンスカーには無料Wi-Fiサービスのイメージがありますが、それ以前に無線LANを用いた実証実験が行われていました。
その実証実験は2002年2月1日から3月31日にかけて行われ、ITという言葉をよく耳にする時期だったと記憶しています。

対象車両となったのは30000形(EXE)で、1号車に設置された専用サーバーにあるコンテンツに対して、乗車時に貸し出すノートパソコンから無線LAN経由でアクセスし、情報を取得するというものでした。
@Trainとして提供されたこのサービスは、新宿駅の構内で無線LANを用いて車両側のサーバーにある情報を更新するもので、リアルタイムに情報が更新される現代を生きていると、かなり時代を感じる取り組みだったことが分かります。

時が流れた2012年12月13日からは、ロマンスカーの車内で無線LANサービスの提供が始まりました。
au等の公衆無線LANサービスが利用可能で、世の中にスマートフォンが急速に普及しつつある、そんな時期のことです。
その後は、2014年12月1日からodakyu Free Wi-Fiのサービスが開始され、ロマンスカーの車内でも利用者や訪日旅行者が使えるようになっていましたが、2024年にロマンスカーの車内での提供は終了となりました。

役目を終えた面がある無料Wi-Fi

車内での提供が終了した無料Wi-Fiですが、それについては様々な声が聞かれます。
継続して使いたい方もいれば、特に気にしてない方もいるわけですが、サービスの開始当初とは環境が大きく変化したのは間違いありません。

日本においては、ガラケーと呼ばれる独自の携帯電話文化が定着し、iモードに代表される専用の情報サービスが提供されてきました。
iPhoneの登場以降、世界中でスマートフォンへのシフトが加速し、日本も同様の流れとなりましたが、急速な普及で増加する通信量に対してインフラの整備が追いつかず、モバイル通信が繋がりにくい状況が発生します。
ラッシュ時の車内等はその傾向が顕著で、全然繋がらないような時もあったことを思い出します。

現代以上に料金は高く、繋がりにくい状況がある中では、ロマンスカーの車内で無料Wi-Fiが使えるメリットは大きく、特急券の販売促進にも寄与すると考えられることから、導入が決まったものと思われます。
当然のことながら、提供にあたってのコストは小田急が負担するため、特急券が売れてこその無料Wi-Fiだったともいえるでしょう。

時が進む中で、電車内における通信環境は変化し、モバイル通信の安定性は大きく向上しました。
サービスを開始した当初よりも、ロマンスカーの車内における無料Wi-Fiの必要性は下がったといえるため、コストをかけてまで提供を続ける理由はなくなったものと思われます。
言いかえれば、特急券の販売促進に寄与しなくなれば、そのコストは特急料金にはね返ってくるため、値上げ幅の抑制という意味でも、終了自体は合理的な判断といえそうです。

おわりに

無料Wi-Fiの提供終了は、ロマンスカーの車内における通信環境の変化を実感し、一つの時代が終わったのだと理解しています。
2002年に行われた実証実験時と比較すれば、通信環境や情報を得る手段は格段に進化しており、その変化には改めて驚かされました。