小田原線から多摩線が分岐し、1日を通して多くの車両が行き交う小田急の新百合ヶ丘駅。
3面6線の配線を活かし、多摩線の折り返し列車をさばきつつ、小田原線と多摩線の直通運転も行われています。

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そんな新百合ヶ丘駅での折り返し運転は、小田急の中では比較的珍しい扱いで行われていますが、それはどのようなものなのでしょうか。

ホームで直接折り返す多摩線の列車

多摩線内を走る列車は、主に大きく二つのタイプに分かれます。
各駅停車が担う多摩線内を往復する列車と、小田原線と直通運転を行う急行がそれにあたり、これら以外には快速急行等が少し設定されています。
日中の急行は多摩線内を各駅停車として走行し、新百合ヶ丘駅で列車種別を変える運用となっています。

新百合ヶ丘駅で折り返す列車については、3番ホームか4番ホームに入線し、一旦引き上げることはせず、そのまま折り返し列車として運行されます。
ホームに停車している時間が長くなるため、乗客は車内で座って待つことが可能となっており、その間に乗務員はホームを歩いて前後の交代を行い、時間になるとそのまま発車していきます。

小田急においては、新宿のような頭端式ホーム以外の駅では珍しい扱いとなっており、1日を通してほぼ全ての列車がホームで折り返している途中駅は、新百合ヶ丘が唯一です。
他の駅では乗客をホームに降ろした後、車両はドアを閉めて引き上げ線に入り、空車の状態で再度本線へと出てくるのが基本となっています。
乗り換えがしやすいことや、逆線発車を避けるため、小田急では一度引き上げ線に入れるのが基本の扱いであり、新百合ヶ丘駅は例外といえるでしょう。

効率的ながら課題もある多摩線の折り返し

新百合ヶ丘駅がこのような扱いで運行できるのは、小田原線の上り線と下り線の間に、多摩線専用のホームが設けられているためで、開業以来変わらずに続いてきました。
同様に支線が分岐する相模大野駅については、江ノ島線専用のホームが設けられていないため、相模大野止まりの列車は引き上げ線での折り返しとなっています。

専用のホームがあることで、逆線発車にはならず、案内もしやすい新百合ヶ丘駅ですが、課題がないわけでもありません。
小田原線と多摩線の乗り換えを伴う場合、階段等を使った上下の移動が発生しますが、大量の利用者が一気に移動するため、どうしてもホームへの滞留が発生してしまうのです。
列車の発車時刻が迫っていると、急いで移動しようとする利用者もいるため、危ないと感じるようなシーンも散見されます。

相模大野駅の場合には、ホーム上での対面乗り換えとなるため、新百合ヶ丘駅ほどの混乱は発生していません。
利用者が少なかった時代には、乗り換えに伴う混乱は今ほどではなかったと思いますが、多摩線のホームがあまり広くないこともあり、現代においては設備の限界を迎えているようにも思います。
元々は新百合ヶ丘駅まで複々線化される計画だったことを踏まえると、多摩線内での折り返しを中心としたダイヤではなく、直通運転が基本となる予定だったのかもしれませんね。

おわりに

今後は大規模改良工事が予定され、その際にホームドアも設置される新百合ヶ丘駅。
現行のホーム配置を維持するのか、それとも大きな変更が発生したりするのか、改良工事の中身も気になるところです。