小田原行きの6両急行や、江ノ島線に向かう各駅停車が折り返すため、新宿方に引き上げ線が設けられている小田急の町田駅。
相模大野駅にも新宿方に引き上げ線が設けられていますが、町田駅も高頻度で使われています。

町田駅の引き上げ線は、6両編成までの折り返しに対応していますが、小田急は10両の列車による運行が多くなりました。
この引き上げ線を10両に対応させることは、物理的に可能なのでしょうか。

引き上げ線を10両分に延長できそうな用地

町田駅の新宿方にある引き上げ線は、玉川学園前8号踏切と7号踏切を超えた先に設けられています。
踏切の間にポイントが設置されており、折り返す車両は駅から比較的離れた位置まで進み、7号踏切の間近に小田原方の先頭車が停車します。

駅から離れた位置まで線路があることから、10両が折り返せそうにも見えますが、踏切が二つもある関係でそれは難しく、仮にポイント等を移設して現在の位置関係で実行しようとした場合には、折り返しが終わるまで踏切が開かない状態となるでしょう。
現実的に10両の折り返しは困難であり、6両までの折り返ししかできない構造となっています。

20240615_02

上下線の間にある線路が引き上げ線で、6両が停車できる長さで終わっています。
しかし、上下線の外側にある用地には余裕があり、本線の位置を変更すれば、引き上げ線の延長自体は可能とみられます。

留置線の先には中央橋が架かっていますが、ここも幅には余裕がある状態であり、10両分の長さまで延長することができそうです。
相模大野駅までの複々線化が考えられていたことを踏まえると、それに対応した構造となっているのでしょう。

10両に対応させるメリットとデメリット

引き上げ線で10両が折り返せない町田駅ですが、上り線から直接2番ホームに進入し、そのまま折り返すことも可能な配線となっています。
実際にそれを使用した折り返しも一部の列車で行われていますが、列車密度が高い状態では使えるタイミングが限られるほか、利用者の目線では逆線到着となるデメリットがあります。

新宿方にある引き上げ線を10両に対応させれば、ホーム上での折り返しに加えて、選択肢が増えることになりますが、踏切を支障する時間が若干長くなるという面では、デメリットがないともいえません。
一方で、折り返す列車の基本は6両ですから、10両に対応させたからといって、常に影響が出るわけでもないため、延長しておくメリットはありそうです。
問題はコストの面であり、架線柱等の移動が必要になると思われるため、意外と大規模な工事になることが予想されます。

コストの面さえ無視すれば、引き上げ線が10両に対応することで、運行支障時の折り返しにはメリットがありそうです。
町田から小田原までの折り返し運転となった場合、8両以上の列車は直接2番ホームに入って折り返しますが、降車と乗車が入り乱れる混乱が見受けられ、これを避けることができるようになります。
とはいえ、費用対効果があるのかといえば難しそうで、6両のままとされているのもそこが理由なのでしょう。

おわりに

延長自体はできそうなものの、今日に至るまで6両のままとなっている町田駅の引き上げ線。
仮に行われることがあるとすれば、それは運行形態が大きく変わるような時なのかもしれませんね。