本線である小田原線を中心に、江ノ島線と多摩線を加えた路線網で構成される小田急。
路線が長いため、区間によって車両の両数には差があり、特急以外では主に6両、8両、10両の列車が運行されています。

昔は全線で4両から10両までの多種多様な両数が見られましたが、近年は区間によって両数の統一が図られるようになりました。
この統一により、本線と支線の直通運転にも制限が生まれていますが、なぜ統一されてきたのでしょうか。

様々な両数が見られた小田急線内

昔は新宿寄りにも短い両数の列車が走っていた小田急ですが、近年は8両と10両に統一されました。
8両でさえ各駅停車でしか見られない少数派であり、後々は10両に統一されることが想定されます。

今となっては信じられませんが、昭和の終わり頃でも4両の各駅停車が走り、時間帯によっては準急や急行にも6両がある等、昔の小田急では多種多様な両数の列車が見られました。
各駅停車の6両は、8両が主力となった後も細々と残っており、近年も見ることができましたが、これもまた過去の存在となっています。

6両の各駅停車は、支線との直通運転やロングランにも便利な存在で、新宿からの片瀬江ノ島行き等も見ることができました。
ホームの長さが短い小田原線の末端部でも停車できるため、小田原行きの各駅停車としても重宝されていたことを思い出します。

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箱根登山線内の設備が改良されたため、現在は物理的に無理な運用となっていますが、かつては新宿から箱根湯本まで走る各駅停車も存在し、柔軟な運用が組まれていたことが分かります。
一方で、分割併合がなくなったこともあり、運用が煩雑になるデメリットもあったためか、複々線化が完成する頃には、こういった珍しい列車がかなり少なくなりました。

両数の統一が進んできた背景

時間帯や運用の都合に合わせて、新宿寄りでも短い両数が見られた小田急ですが、整理が進んだ背景にはホームドアとの関係があるものと思われます。
電車を駅で定位置に停車させるTASCといった装置も関係し、様々な両数が混在するデメリットは大きく、それ自体が少数派であれば入線させないほうが効率的になるためです。

異なる両数の列車が混在する場合、列車の両数を判定するセンサーの数が増えるため、その分がコストアップに繋がり、車掌が手作業で開閉する場合には誤操作のリスクも伴います。
総合的に考えると、できるだけ両数を揃えることが望ましく、新宿寄りは6両に対応させない方針になったものと思われます。

ホームドアの設置にあたっては、ロマンスカーのドア位置に合わせ、開口幅の広いものを導入するといった苦労がありますが、設置が進めば特急の臨時停車は難しくなり、気軽に停車駅を増やすこともできなくなるでしょう。
設備の充実は、利便性の向上や安全性を高めることに繋がりますが、様々な制限を生むことも事実です。

近年は駅での案内も充実しましたが、これもまた制限を増やす一因であり、昔のように何もないような状態は、何かを変えることにおいてはよかったのでしょう。
両数の統一は案内上のメリットもある反面、新宿寄りに6両を入れられなくなった弊害はあるようにも思われ、色々と難しい時代になったものだと痛感します。

おわりに

ホームの長ささえ足りていれば、様々な両数の列車を走らせられたのは過去のこととなりつつあります。
ハイテク化はよい面が多くある一方で、柔軟性は確実に低下するのが難点なのかもしれませんね。