電車の中で多くの外国人を見かけるようになり、人々の日常はほぼコロナ禍前の状態に戻りました。
一方で、生活様式には一定の変化があったことも事実であり、鉄道の利用状況は元の水準までは戻らないといわれています。

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小田急においても、以前の水準には戻っていない状態となっていますが、定期外収入と定期収入の比率は、コロナ禍を経てどのように変化したのでしょうか。

定期外収入と定期収入の比率

こんなに電車が空いていて大丈夫だろうかと心配したコロナ禍でしたが、最近は混んでいると感じる機会も多くなり、満員電車が戻ってきたことを実感します。
一方で、コロナ禍前ほどの混雑ではないと感じるのも事実であり、それは実際の数値にも表れています。

早速ですが、小田急から2023年度の情報が開示されたことから、定期外収入と定期収入の比率について確認していきましょう。
私が調べられる範囲だと、連続したデータがあるのが2007年度以降だったため、そこからの推移を見てみたいと思います。

以下は、左側が定期外収入、右側が定期収入で、括弧内は全体に対する比率を示し、単位を百万円とした場合の年間における推移です。

2023年度 ⇒ 71,427:41,489(63:37)
2022年度 ⇒ 63,230:37,805(63:37)
2021年度 ⇒ 52,991:35,618(60:40)
2020年度 ⇒ 43,576:34,291(56:44)
2019年度 ⇒ 68,952:48,354(59:41)
2018年度 ⇒ 71,823:47,703(60:40)
2017年度 ⇒ 70,451:46,871(60:40)
2018年度 ⇒ 69,883:46,337(60:40)
2015年度 ⇒ 68,974:45,907(60:40)
2014年度 ⇒ 68,484:44,987(60:40)
2013年度 ⇒ 68,576:45,736(60:40)
2012年度 ⇒ 67,934:44,638(60:40)
2011年度 ⇒ 65,487:44,051(60:40)
2010年度 ⇒ 65,877:44,342(60:40)
2009年度 ⇒ 67,559:44,118(60:40)
2008年度 ⇒ 68,877:44,398(61:39)
2007年度 ⇒ 69,099:44,204(61:39)

あえて端数を切った比率としていますが、2009年度以降は定期外が6、定期が4という比率で長く安定していました。
生活様式に変化があった2020年度以降はそれが大きく動き、2023年度時点で定期外が63、定期が37という比率になっています。

比率の変化は何を意味しているのか

比率の変化量としてはそこまで多くないようにも見えますが、年単位でここまで大きく動くのはやはり特殊であり、それだけコロナ禍の影響は大きかったことが分かります。
なぜならば、東日本大震災の影響を受けている2010年度と2011年度でさえ、数値には落ち込みが見られるものの、比率には変化が起きていないのです。

定期外が6、定期が4という比率で安定していたことは分かりましたが、過去はどうだったのでしょうか。
1965年の時点では、定期外が68、定期が32という比率であり、観光路線として発展してきた小田急が、年々通勤や通学の利用比率を高めてきたことが分かります。

見方を変えると、2019年度に定期収入のピークを迎えており、通勤や通学の需要はコロナ禍直前まで増え続けていたことが分かりますが、定期外収入については既に落ち始めていることから、年度末には外出を控える動きは始まっていたともいえそうです。

2020年度については、定期の比率が44まで上昇していますが、これは定期以上に定期外の落ち込みが激しく、結果的にこうなった面が強いといえます。
その後の動きは、定期外が2018年度の水準を回復しているものの、定期は2007年度にも満たない状況であり、通勤需要の低下や少子化の影響が出ているものと思われます。
2023年度の定期収入は、調べる限り2000年代前半の水準であり、なかなか大きな変化であるといえそうです。

おわりに

小田急の予測では、2024年度についても緩やかな回復を見込むものの、コロナ禍以前の水準には戻らないとされており、私も同様の考えです。
そうなると、沿線人口を増やして定期収入を補強しつつも、定期外収入をどうやって増やすかということになるため、子育て支援の取り組み等が何を狙っているのかは、一目瞭然ということになります。

労働人口の減少により、通勤需要はさらに減るため、定期外収入の比率は今後より一層重要となりそうです。
インバウンドが活発であることを踏まえれば、観光需要に向けた取り組みもさらに強化されると思われるため、今後はそのような動きも目立ってくるかもしれませんね。