戦後の高度経済成長期に設けられ、藤沢トンネルに隣接する立地が特徴となっている善行駅。
小田急では1960年に二つの新駅が誕生していますが、百合ヶ丘駅と善行駅は設置された理由が同じで、どちらも団地の建設に合わせたものでした。

そんな善行駅ですが、立地の関係で藤沢寄りは上下線間が離れており、下り列車はカーブを通過しつつトンネルへと入ります。
島式ホームにしてしまったほうが都合がよさそうですが、そのような選択肢はなかったのでしょうか。

上下線間が開いていく善行駅

1960年10月1日に開業した善行駅は、善行団地の開発が開始されることに伴い設けられました。
江ノ島線内としては起伏が激しい善行駅の周辺ですが、元々は緑が豊かな農村地帯で、1957年に総合都市計画が策定されて以降、今日まで発展を続けることとなります。

起伏の激しさを物語るかのように、善行駅の南側には藤沢トンネルがあります。
江ノ島線内では唯一のトンネルであり、開業時からある古いものですが、小田原線と同様に上下線がそれぞれ独立した単線を構成するタイプです。

20240706_01

駅の南側がこのような線形となっており、単線のトンネルが2本並んでいる関係で、下り線はカーブを描いています。
カーブは善行駅の下りホームにもかかっており、6両分という短い長さながら直線にはなっていません。

島式ホームが合いそうな線形

善行駅のホームを眺めていると、なぜこのような配置にしてしまったのだろうという疑問がわいてきます。
小田急は高速運転を基本とするために、駅の前後にカーブができる島式ホームを極力採用しませんでしたが、善行駅の場合は島式ホームにしたほうが都合がよさそうに見えます。

トンネルとの位置関係を活かし、善行駅に島式ホームを採用した場合、藤沢寄りの上下線間が広がっている位置からホームを設け、途中で幅を広げることも視野に入れつつ、相模大野方に向かって狭めていけばよいと思われます。
現在は島式ホームになっている代々木八幡駅に近いものですが、ホームの形状としては素直になりそうです。

島式ホームでもよかったのではないかというのは、誰でも思いつきそうなことですが、開業した頃のホームを見てみると、今よりも長さが短かったことに気付きます。
つまり、元々は線形を変えずにホームを設置しており、位置も直線部を中心としていたようです。
藤沢寄りにも延長された過去があるようなので、6両分の長さにする過程でより一層カーブにかかったものと思われます。

もう一つの背景として、当初は橋上駅舎ではなかったことも関係しているのかもしれません。
善行駅は開業から10年ほどで橋上駅舎化されていますが、地上に駅舎があると島式ホームは都合が悪いため、相対式のホームを採用した可能性が高いといえそうです。

おわりに

橋上駅舎化とホームの延長により、結果的に島式ホームのほうが合いそうな状態になってしまった、善行駅にはそんな過去がありそうに感じました。
最初から今の規模で開業していたら、代々木八幡駅のような構造になったのかもしれませんね。