特急停車駅にもホームドアの設置をスタートし、ロマンスカーとの組み合わせも見慣れてきた小田急。
車両によってドアの位置が異なるため、ホームドアの設置がなかなか進まなかった小田急ですが、大開口の特殊なものを採用することで、全ての車両への対応を実現しました。

様々な苦労があったことをうかがわせるホームドアは、どのような構造なのでしょうか。

ホームドアの設置に苦労した小田急

ホームドアを設置するハードルが高いのか低いのかといえば、小田急は高いとされる路線でした。
地下鉄等のように、車両の種類が少なく、運行される列車も各駅停車ばかりという路線とは異なり、小田急では多種多様な車両や列車が走っており、単純なホームドアでは対応が難しかったのです。

小田急の場合には、通勤型車両にワイドドア車というドアの幅や位置が異なる車両が存在し、電磁直通ブレーキを使うホームドアと相性がよくない車両も多数残っていました。
さらに、特急用のロマンスカーは通勤型車両とドアの位置が大きく異なり、ホームドアを設置するハードルは極めて高い状態だったのです。
小田急で最初にホームドアの使用を開始したのは2012年の新宿駅ですが、60000形(MSE)でさえ使用開始の4年前である2008年のデビューであり、世の中の流れはなかなか苦しいものだったといえます。

このような背景があった小田急ですが、少しでもホームドアの設置駅を増やすべく、通勤型車両の置き換えと改造を進め、特急が停車しない駅やホームに先行して設置を進めていきます。
しかし、ロマンスカーについてはMSE以前の車両を全て置き換えるというわけにもいかず、ホームドアのほうを特殊な構造とすることで対応することとなりました。

大開口の特殊なホームドア

ロマンスカーの停車に対応させるという難題に対し、小田急は大開口のホームドアを設置するという結論に至りました。
大開口といっても、全てのドアがそうなっているわけではなく、位置によって幅が異なるかなり特殊なものとなっており、ロマンスカーに合わせた配置が最大の特徴です。
1000形のワイドドア車が引退したら、ホームドアにワイドドアが設置されたというのも、考えてみれば皮肉なものです。

車両側の位置に合わせ、ホームドアの開口幅を広げることにしたものの、ただドアを大きくすればよいというわけでもありません。
ホームドアには収納部となる戸袋が必要ですが、サイズが大きくなればなるほど、収納部も大きくする必要があるためです。
そこで、そのような課題を解決するため、特急停車駅にはかなり特殊な設計のホームドアが設置されています。

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あえて通勤型車両が停車しているシーンの写真を使いますが、左側のドアは閉まったままです。
ロマンスカーの場合、10号車は車両の端にドアがありますが、通勤型車両ではその部分を開く必要がないため、このような動作をするようになっています。

戸袋の問題を解決したのは、2枚のドアを重ねた特殊な構造で、これにより収納部分の幅を半分にすることができました。
ドアの中にドアがあるような構造というわけですが、設計にはかなりの苦労がありそうです。

おわりに

かなり特殊なホームドアを採用しても、ロマンスカーは一部のドアを閉め切りとせざるを得ませんでした。
いつか登場するであろう新型のロマンスカーは、このホームドアを活かした設計となるか、それとも将来的なことを考慮して70000形(GSE)のようにするか、今後の選択についても気になるところです。