2023年の終わりに引退し、現在は喜多見検車区内に留置されている小田急の50000形(VSE)。
ロマンスカーブランドの復権を掲げて登場したこともあり、様々な面で特殊な車両といえる存在で、編成定員の少なさにもそれが表れていました。

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小田急では様々な前面展望車を走らせてきましたが、それらの各車両と比較して、VSEの定員はどれぐらい少ないのでしょうか。

各前面展望車の編成定員

ロマンスカーの代名詞となった前面展望席は、時代の流れに合わせて減少を続けてきたものの、現在も70000形(GSE)がその伝統を受け継いでいます。
前面展望席の歴史は、1963年に登場した3100形(NSE)に始まり、ロマンスカーの伝統としてしばらく続くこととなりました。

観光輸送を目的として生まれたロマンスカーでしたが、沿線の発展後は利用者層の多様化が進み、気付けば前面展望席を備えた車両は数を減らし、座席定員が重視される傾向となっています。
VSEはそんな状況下で編成定員を大きく減らし、徹底的にこだわりを盛り込んでの登場となりましたが、実際にどれぐらい少なくなっているのでしょうか。

以下は前面展望席を備えたロマンスカーの編成定員で、改造により座席が減少した形式については、変更後の数字を記載しています。

3100形(NSE):456名
7000形(LSE):454名
10000形(HiSE):432名
50000形(VSE):358名
70000形(GSE):400名

結果はこのようになっており、新しい車両ほど少なくなる傾向はあるものの、VSEは極端に少ないことが分かります。
8両の連接車だった3000形(SE)の登場時が348名、20000形(RSE)が402名だったことを踏まえても、VSEの編成定員は少なく設定されていたといえるでしょう。

編成定員を比率で表すとどうなるのか

他の前面展望車と比較して、VSEの編成定員が少ないことは分かりましたが、数字だけだとイメージしにくいため、比率でも見てみましょう。
他の車両と比較した編成定員の比率を算出すると、以下のとおりとなります。

3100形(NSE):78.5%
7000形(LSE):78.9%
10000形(HiSE):82.9%
70000形(GSE):89.5%

GSEもそれなりに少なくなっているとはいえ、VSE以前に登場した車両に対しては、約8割ほどの定員となっていたことが分かりました。
編成定員が減少した理由は、シートピッチを拡大したことやサルーンを設けたためですが、それだけこだわり抜いた内装だったというなのでしょうね。

おわりに

理想的な車内を追求し、編成定員を減らしてでもそれを実現したVSE。
座席を減らすということは、その分収益が減ることを意味しますが、今後ここまで踏み込んだロマンスカーが登場することはあるのでしょうか。