小田急から都心部に入るための重要なパートナーとして、長年に渡って直通運転が行われている東京メトロの千代田線。
現在は準急や急行での運行が基本とされ、昔のように小田原線内を起終点とするようになりました。

多摩線と千代田線が直通運転をしていた時期は、少しずつ遠い過去となってきましたが、やめてしまったことは最適解だったのでしょうか。
コロナ禍を経て状況も変化しつつあるように思い、改めて考えてみたいと思います。

多摩線と千代田線の関係

小田急と千代田線の相互直通運転が始まったのは、1978年3月31日に実施されたダイヤ改正からでした。
元々の計画では、多摩線との相互直通運転を行う想定となっていましたが、小田原線の本厚木駅を起終点とし、準急で運行を開始することとなります。

多摩線と千代田線の直通運転が始まるのは2000年のことで、朝のラッシュ時に上りの急行が走るようになりました。
限られた本数でのスタートでしたが、2002年のダイヤ改正で多摩急行という新たな列車種別が設定され、千代田線との直通運転は多摩線が基本という時代が始まります。
多摩急行は長きに渡って利用者に親しまれ、2016年に大半を急行に変更しつつも継続しますが、複々線が完成した2018年に、千代田線との直通運転は小田原線を基本とするよう変更されることとなりました。

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変更の理由は、千代田線に向かう利用者が世田谷区等に多い、多摩線から乗り換えなしで新宿に行けるようにするといったものだったと記憶しています。
複々線の完成を機に、多摩線は京王に真っ向勝負を挑むスタイルとなり、列車の運行パターンも大きく変わりました。

多摩線と千代田線の直通運転をやめてよかったのか

多摩線と千代田線の直通列車が事実上消滅してから6年が過ぎ、結果はどうなったのでしょうか。
生活様式が変化するような時期を挟みつつも、表面的には何か利用動向にポジティブな変化があったようには見えないというのが正直な感想です。

根本的な課題として、京王は小田急よりも運賃が安く、多摩センターから新宿まではICカードを利用する場合で31円の差があります。
往復で62円の差は大きく、1時間あたりの本数も多いため、状況を大きく変えるのは難しいのも事実でしょう。

千代田線との直通運転を小田原線に変えたのは、代々木上原駅の配線も影響しているとみられ、緩行線を走る準急系の列車としたかった面もありそうです。
一方で、減便後に日中の直通運転が急行になってしまったことで、前提は変わってしまいました。

このような現状を踏まえた場合、京王と真っ向勝負をすることに意味があるのかは、難しい問いになるように思います。
小田原線と江ノ島線の利用者が多く、多摩線の路線距離が短いことを踏まえると、そもそも勝負を挑む場合の前提条件が、あまりにも不利ともいえるのです。

そこで浮上するのが、それぞれの乗り入れ先である東京メトロの千代田線と、都営地下鉄の新宿線です。
ルートが直接競合する関係にはないため、差別化する要素になり、座って行けるメリットも大きいといえます。
多摩急行が設定された際には、このような点を考慮したようですが、結果は廃止となってしまいました。

需要という面でどこまであるのかは別として、差別化することで新たな需要を掘り起こせるかもしれない点では、まだ可能性があるように思うのです。
多摩線の沿線は人口が減る時期に入っていますが、新宿での直通では需要を掘り起こしにくいのが実態であり、改めて差別化戦略にシフトしてもよい気はします。
世田谷区等の利用者を拾いつつ、千代田線内に直通する列車を設定するといったやり方もありそうですから、新たな列車種別で再挑戦してみてもよさそうです。

ダイヤ乱れの影響や人員不足等、簡単ではない面もありそうですが、現状が最適解とも限らない気がしており、何らかのチャレンジをしてほしいようにも思います。
そもそも全直通列車の路線を集約しなくてもよいため、時間帯や列車によって変える昔のような設定でもよいでしょう。
いずれにしても、今の状態が最適解なのか、コロナ禍を経て考える時期にきているように思いました。

おわりに

線内を通過運転する列車が減り、一昔前に戻ったようにも感じる多摩線。
列車の本数は適正化されているように思いますが、ダイヤ上の工夫はもう少し何かできるようにも感じており、今後の動向が気になるところです。