2000年代に改良工事が行われ、バリアフリー化が図られた箱根登山線の風祭駅。
現在は小田急の車両のみが通る駅ですが、歩いて数分の場所ではモハ1形の107号が保存されています。

とても恵まれた環境で保存される107号ですが、どのような余生を送っているのでしょうか。

風祭駅付近で保存されている107号

小田急の1000形に揺られつつ風祭駅で下車すると、歩いて数分でオレンジバーミリオンに塗られた車両が見えてきます。
車両は2019年に引退したモハ1形の107号で、箱根登山鉄道(現在の小田急箱根)としては最後の吊り掛け駆動車でした。

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保存されている107号はこのような姿で、屋根もある良好な環境となっており、今にも走り出しそうな佇まいです。
屋根の有無は、保存車両の腐食状況に大きく影響することから、107号はとても恵まれた環境にあるといえるでしょう。

107号が保存されている場所は、鈴廣かまぼこの里の敷地内で、「えれんなごっそCAFE107」の一部として使われています。
つまり、保存車両ではあるものの、施設としての一部にもなっており、日常的に車内に入ることも可能です。

風祭駅といえば、駅に隣接して鈴廣かまぼこの里が展開されており、かまぼこの購入や食事をすることが可能です。
私自身も箱根を訪ねた際にはお世話になっており、おみやげにかまぼこを買って帰るのが定番となっています。

元の状態を極力維持しつつ活用される保存車両

施設の一部になっているとはいえ、107号の保存状態は極めて理想的といえるかもしれません。
えれんなごっそCAFE107では、かまぼこを使ったピンチョスやビール、コーヒー等が提供されており、それらを107号の車内で食べたり飲んだりできます。

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車内の様子はこのようになっており、冷房が設置されていることを除けば、元の状態が極力維持されています。
訪ねたのは真夏の暑い日で、休憩のためにコーヒーを買って車内に入りましたが、現役時とほとんど変わらないその様子に驚かされました。

変に車内を造り変えることなく、車両は屋根のある場所に置かれ、営業中の店舗内にあることでセキュリティー面での安心もあることから、107号はとても恵まれた保存環境にあるといえます。
さらに、商品を購入して車内に入れることから、日常的に人との触れ合いもある状態で、幸せな余生と表現できるように思いました。

おわりに

保存車両の維持や管理は大変で、結果的に解体されてしまうことも多いのが実情ですが、107号は活用のモデルケースとして参考になるように感じました。
箱根を訪れた際には風祭駅で途中下車し、余生を送る車両と触れ合ってみてはいかがでしょうか。