2025年3月15日にダイヤ改正を行うことが発表され、久し振りにポジティブな変化がありそうな小田急。
現行のダイヤがベースとはなりますが、顕在化している課題に対するアプローチが行われ、改正後は利便性が向上するものと思われます。

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ダイヤ改正による変更点は色々とありますが、今回は東京メトロの千代田線と直通運転を再開することになった多摩線について、背景や狙いを考えてみたいと思います。

千代田線との直通運転を再開する多摩線

2020年にコロナ禍へと突入して以降、前向きなダイヤ改正がなかった小田急ですが、2025年は久し振りに違う方向性となりそうです。
保有車両数の削減等に伴い、2022年に大規模な減便を行った小田急では、世の中の正常化によって減便の弊害が出てきた部分もあり、今回はその点を中心に修正が入ることとなりました。



ダイヤ改正については、阪和線の沿線からさんもまとめているので、是非ご覧下さい。
過分なお言葉を頂戴し、大変恐縮です。

さて、今回注目したいのは、2018年のダイヤ改正で基本的に廃止となった、多摩線と千代田線の直通運転が再開される点です。
7年を経ての復活ですが、まさにこの部分における課題を感じていたため、それを解決する方向に進んだことを嬉しく思いました。



多摩線と千代田線との直通運転といえば、2002年に登場した多摩急行でしたが、複々線の完成に合わせて新宿との往復を基本とするようになり、過去のものとなっています。
2018年のダイヤ改正では、日中における千代田線との直通運転は準急が基本となり、成城学園前や向ヶ丘遊園で折り返すようになりました。

初期においては、土休日に10分おきに準急が設定されるといった攻めのダイヤでしたが、各駅停車の後追いとなる準急は空いており、2022年の減便によって急行と統合されてしまいます。
しかし、向ヶ丘遊園までしか行かない急行は利用価値が低く、接続もよいとはいえなかったため、とても空いている状態でした。

このような状況を踏まえれば、多摩線の唐木田まで走らせ、新百合ヶ丘駅での乗り換えを可能とすれば、直通急行の利便性が高まることは容易に想像できますが、やはりその方向となりました。
意外だったのは、新宿からの急行は残したまま、多摩線内の折り返しとなっていた列車を置き換えたことで、多摩線内の全てを急行停車駅にするという対応により、新百合ヶ丘駅での種別変更は発展的に解消することとなります。

多摩線に大きな変更が発生する背景を考える

日中に千代田線との直通運転を再開し、多摩線内の各駅に停車する急行を増発することとなりましたが、その狙いはどういったものなのでしょうか。
私が考えることとしては、運用の効率化と沿線の価値向上、この二つがあるように思います。

千代田線との直通運転再開については、利用価値があまりにも低かった向ヶ丘遊園で折り返す急行を延長し、多摩線と一体化することで運用効率が高まる面がありそうです。
日中は多摩線内を折り返す各駅停車の設定自体がなくなるため、向ヶ丘遊園と新百合ヶ丘の2駅で折り返しが削減されます。

この変更は快速急行に乗客が集中するのを緩和する効果もあると思われ、減便以降で生じていた課題の一部を解決できるものとみられます。
日中以外を走る急行についても、多摩線内の全駅に停車することになるため、新百合ヶ丘駅での快速急行との乗り換えが減り、混雑緩和へと繋がるように思いました。

運用の面では、本数が減ってきた6両編成を多摩線から追放し、回送等の削減を図る可能性もあります。
6両は全ての編成が海老名検車区の所属となっていることから、今後は多摩線との行き来を減らす狙いがあるのかもしれません。
いきなりは難しいようにも思いますが、多摩線から6両の運用自体がなくなる可能性すらありえそうです。

もう一つの視点である沿線価値の向上については、ラッシュ時以外に多摩線内を通過する列車がなくなりそうなため、一見すると逆に感じなくもありませんが、通過していたのは僅かに3駅であり、所要時間の面では大きく変わりません。
小田原線との直通運転が基本となれば、来た列車に乗ればよいことにもなるため、通過駅があるメリットを上回る面もありそうです。

今まで急行が通過していた3駅については、今回のダイヤ改正で飛躍的に利便性が高まりそうです。
五月台、黒川、はるひ野の各駅が該当しますが、まだ開発の余地がある地域でもあり、高齢化等により人口の減少が進むことを踏まえれば、利便性の向上により選ばれる駅とすることには、経営的な意図が感じられます。
地域の中心となる新百合ヶ丘駅も近く、先行きは不透明ながら横浜市営地下鉄の乗り入れも予定されているため、今回の変更は現実的な範囲での投資と考えられそうです。

やや飛躍しますが、新百合ヶ丘駅で予定されている大規模改良工事との関連も気になります。
多摩線内の折り返しが仮になくなれば、配線の変更等も可能となる可能性があり、どこまで考えてのダイヤ改正なのかも気になるところです。

おわりに

今回のダイヤ改正では、多摩線を巻き込んだ新百合ヶ丘から新宿寄りの区間における変更が目立ちます。
小田原線の新百合ヶ丘以西や、江ノ島線の変更点は限られそうですが、そのあたりについては別途まとめてみる予定です。