小田原線から江ノ島線が分岐し、1日を通じて多くの電車が行き交う小田急の相模大野駅。
通過線を備えた2面6線の配線となっており、特急による追い抜き等も行われています。

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そんな相模大野駅ですが、元々は複々線化の終点となる構想があったようです。
2面6線という配線は、複々線化を見越したものになっているのでしょうか。

複々線化と相模大野駅の配線

現在は登戸駅までが複々線(登戸駅から向ヶ丘遊園駅までは3線)となっている小田急ですが、新百合ヶ丘駅や相模大野駅までとする構想があります。
ありますという表現にはしたものの、実現の可能性はほぼないといえることから、実際にはありましたというほうが適切かもしれません。

新百合ヶ丘駅と相模大野駅は、それぞれ支線が分岐する駅となっており、前者については新宿方にある留置線を含め、複々線化時を想定した配線になっているといえるでしょう。
小田原方についても、用地には余裕があるように思われるため、複々線化の想定が昔はあったことをうかがわせます。



新百合ヶ丘駅から11km近くあり、実現可能性という意味ではさらに低くなる相模大野駅ですが、こちらはどうなのでしょうか。
用地という面では、新宿方に複々線分の広さは確保されており、将来的な可能性については考慮していたといえるでしょう。

配線については、通過線を備える2面6線という配線になっており、これも将来的な複々線化を考慮していたと考えられます。
そのように考える理由として、似たような配線を持つ駅が小田急にはあり、複々線区間内にある経堂駅が該当するほか、運用上もメリットが多いといえるためです。

経堂駅については、上り線にのみ通過線が設けられており、特急や快速急行等が通過する際に使用されています。
ホームがない線路を通過するため、保安上もメリットが大きい配線ですが、場合によっては優等列車同士の追い抜きが効率的にできるという点が、この配線のメリットといえるでしょう。

相模大野駅については、複線の現状においても優等列車同士の追い抜きが行われており、特急が抜いていくシーンを見ることができます。
これが複々線であれば、町田駅から緩行線を走らせるといった対応を行うことで、より一層効率的に追い抜きをすることができるでしょう。

実現の可能性はほぼない複々線化

新百合ヶ丘駅までの複々線化でさえ見通せない現在、相模大野駅までの実現が可能かといえば、限りなく難しいといえます。
神奈川県からは、相模大野駅までの複々線化について要望が出されていますが、小田急は一定の輸送力を確保しているという立場で、現代においては計画自体がありません。

実際のところ、新百合ヶ丘駅から相模大野駅にかけて、輸送力がひっ迫しているのかといえば、複々線化が必要なほどではないといえます。
今後沿線の人口が爆発的に増えることも考えにくく、現状維持が妥当といえるでしょう。

可能性が少しでもあるとすれば、町田駅から相模大野駅までの複々線化で、急行等を緩行線に流すことによる効率化や、江ノ島線も含めた柔軟な運用が組めるものと思われます。
しかし、用地買収のコストや、得られるメリットが限定的であることを踏まえると、これもまた夢物語といえるかもしれませんね。

おわりに

日本という国が人口減少時代に突入し、鉄道を取り巻く環境も大きく変化してきました。
ひたすら輸送力が足りなくなっていく時代が続いていれば、相模大野駅までの複々線化もありえたのかもしれませんが、現実は違う流れになってしまったといえそうです。