新宿から箱根や江ノ島を結び、小田急のイメージとしても定着しているロマンスカー。
戦後に誕生して以降、展望席を備えた車両等を登場させ、多くの乗客を運んできました。

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3000形(SE)の登場時、小田急は新宿から小田原までを60分で結ぶことを目標とし、2018年にはついに59分で走破する列車が設定され、悲願の達成といわれることとなります。
現在は59分よりも少し遅くなりましたが、高速列車を走らせるのが意外と難しい、小田急と線形の関係を考えてみたいと思います。

直線区間が意外と少ない小田原線

小田急の小田原線上にある急曲線といえば、代々木八幡駅にあるものが有名です。
路線全体で見た場合、ここまで極端な急曲線はありません。

極端な急曲線は少ない小田急ですが、速度制限を受ける曲線は路線上に点在しています。
これは江ノ島線や多摩線と大きく異なる点で、表定速度という点においては、小田原線が最も不利な条件を備えていることになるのです。

新宿駅を出た小田急は、早速カーブを通って南新宿駅に到達しますが、その先も直線区間は長く続かず、代々木上原駅を出た辺りから比較的線形がよくなります。
それでもゆるやかなカーブはあり、快調に飛ばし始めるのは経堂駅を出た辺りでしょうか。

その先も1駅程度の直線は点在しますが、線形がよくなってきたのを感じるのは相模大野駅を出てからで、特急らしさを感じるようになってきます。
それでも、時折あるカーブでは減速があり、やがて山の中に入ってしまうと、ますますスピードは出せなくなります。

このような背景があるため、新宿から小田原という区間で見た場合、ロマンスカーの表定速度は70km/h程度で、最速の59分で走った列車でさえ83.9km/hでした。
ロマンスカーの最高速度は110km/hですが、このスピードを出せる場所は限られ、全体的にはゆっくり走る印象の特急です。

線形と列車密度の歯がゆい関係

小田原線の線形は、列車密度との関係においても、やや苦しい事情を抱えています。
新宿寄りの区間においても、直線区間は点在している状況ではありますが、支線の分岐もあって列車密度が高く、スピードを出したところで先行列車に追いついてしまうのです。

相模大野駅を出れば、ややスピードを出しやすい条件が整いますが、それも長くは続きません。
本厚木から先では列車密度が低くなり、本来であれば特急の本領を発揮できる環境ですが、今度は連続する曲線区間へと突入し、思うように挽回できない環境となっています。

このような背景から、過去に小田急は振り子式の車両開発にも取り組み、車両を用いた試験も行いましたが、その際は実用化に至りませんでした。
カーブが多いハンデを克服するには、そこをできるだけスピードを落とさずに走る、それを目指したことになります。

惜しまれつつ引退した50000形(VSE)では、車体傾斜制御を実用化しましたが、後に続く車両がどうなったのかはあえて言うまでもありません。
高密度の運行が行われる小田急においては、ダイヤを工夫することや、高加減速性能を高めることのほうが、表定速度の向上には効果的ということなのでしょうね。

おわりに

スピードを出せる区間が少なく、どうしても加速と減速を繰り返すことになるロマンスカー。
ダイヤ上の工夫も簡単ではないため、停車駅を増やして乗りやすくする方向になるのは、ある意味必然なのかもしれません。