平日限定ながら、快速急行と対等な列車種別として、朝のラッシュ時に運転されている小田急の通勤急行。
1日の本数は9本と多くはありませんが、小田原線内で通勤急行が快速急行と千鳥停車を行うことで、速達列車の混雑分散が図られています。

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複々線が完成した2018年に登場して以降、基本的なパターンは変わらない通勤急行ですが、ラッシュ時の利用状況にも変化がある中、運転される時間帯はそのままでよいのでしょうか。

通勤急行が運転される時間帯

平日の朝にのみ運転される通勤急行は、多摩線内から新宿駅に向かって走る列車です。
始発駅は唐木田駅と小田急多摩センター駅の二つで、後者は同駅を利用する方々の着席チャンスを増やし、京王に対する優位性を狙っているものと考えられます。

通勤急行が運転される時間帯は、唐木田駅を6時34分に発車する列車に始まり、小田急多摩センター駅を8時10分に発車する列車が最後で、約1時間半程度ということになります。
設定されている本数は全部で9本で、始発駅は唐木田駅発が3本、残りの6本は小田急多摩センター駅となっており、後者のほうが多く設定されている状況です。

運転されている時間帯を見ると、7時から8時半頃にかけて、小田原線内を走るようになっていることが分かります。
多摩線内の発車時刻は少し早いように感じますが、朝のピーク時に小田原線内に入る設定ということになるようです。

通勤急行の運転時間帯は適切なのか

時間帯を限定して運転されている通勤急行ですが、現在の運転時間帯は適切なのでしょうか。
設定されてから7年が経過し、他の列車種別における停車駅には変化もあり、利用状況も同じではなさそうです。

通勤急行が運転される時間帯の前後は、優等列車として急行が設定されてきました。
一方で、2025年のダイヤ改正において、多摩線内の全駅に急行が停まるようになり、平日の上り列車で通過運転を行うのは通勤急行のみとなっています。
小田原線においても、通勤急行の運転時間帯が終了すると、優等列車の中心は快速急行と急行の組み合わせとなり、所要時間の差が目立ちます。

業界や会社ごとに事情は異なりますが、電車の混雑を緩和するには、オフピーク通勤が有効です。
昔に比べれば、通勤時間帯は後ろに長くなっているものと思われますが、9時前には通勤急行の運転が終わってしまいます。
さらに、急行は小田原線内で停車時間が長い駅があったりと、長距離通勤には所要時間の面で不利な要素があり、どうしても快速急行に利用者が集中する状況です。

通勤急行の設定においては、経堂駅等の利便性を確保する面で、通勤準急も組み合わせる必要があります。
全体の輸送力を最適化しようとすると、なかなか難しい面があるのだとは思いますが、もう少し通勤急行の運転時間帯を広げると、オフピーク通勤が拡大する余地がありそうです。

このようなことを思った背景にあるのが、せっかく造った複々線の活用が限定的だと感じているためです。
遠方からの通勤者に対して、時間短縮と混雑の緩和が提供できれば、神奈川県内の沿線価値向上にも寄与するのではないでしょうか。
時間に追われる世の中がよいとは思いませんが、少しでも通勤や通学の時間を短くすることは、個人にとってあまりにも大きなメリットだと思うのです。

おわりに

全ての列車が10両になった以外、基本的なパターンには変化がない通勤急行。
朝のラッシュ時における運行パターンが秀逸なだけに、時間帯が短いのは少しもったいないようにも感じました。