御殿場線との相互直通運転用として登場し、2012年に現役を引退した小田急の20000形(RSE)。
ハイデッカーやダブルデッカーを備える魅力的な車両でしたが、結果的にそれが引退を早めることになってしまいました。

20180716_02

ロマンスカーとしては久々に前面展望席がない車両となったRSEですが、それをカバーするような配慮がされていました。

34年ぶりに登場した前面展望席がない車両

現代では70000形(GSE)のみとなり、少々寂しい状況となってしまいましたが、小田急のロマンスカーといえば、前面展望席というイメージは今でも根強くあります。
1963年に登場した3100形(NSE)で初めて採用して以降、長年に渡ってロマンスカーのシンボルとなってきました。

御殿場線に乗り入れを行うために登場したRSEは、JR東海との協定により前面展望席を採用しませんでしたが、それは3000形(SE)以来34年ぶりのことでした。
その車両同士が交代したというのは、今思えば印象的なできごとだったようにも思います。

前面展望席以外にも、伝統の連接構造を採用しなかったというような変化があり、車体のカラーリングを含めてRSEはやや異質な存在でした。
しかし、ハイデッカーやダブルデッカーの採用により、車両としてのクオリティーはとても高く、他の車両にはない魅力があったともいえます。

配慮されていた先頭車からの眺望

パステルカラーの目立つ車体で、唯一無二の存在でもあったRSEですが、前面展望席がないというハンデを逆手に取り、違った魅力がある構造となっていました。
10000形(HiSE)に続きハイデッカーを採用し、床面が高い位置にあったRSEは、その構造を先頭車でも活かすことで、前面展望席とは異なる価値を追加していたのです。

20240929_01

HiSEは前面展望席部分の床面を下げていましたが、RSEはそのままの高さで乗務員室の後ろまで展開し、高い位置からの眺望が楽しめるようになっていました。
大きな曲面ガラスの採用からも、眺望を楽しめるようにといった配慮がうかがえるほか、乗務員室との仕切もガラスを中心に構成され、クリアな視界が広がるようになっています。

眺望をよくする要素には、運転席の位置も関係していました。
乗務員室は床面が通常の位置まで下げられており、乗客の視界を遮らなかったため、仕切りがあることを除けば、通常とは異なる高さにある前面展望席だったともいえそうです。
上から運転シーンも見ることができたため、通常とは違った楽しみ方ができるロマンスカーでもありました。

おわりに

伝統の構造とは違っていたものの、RSEの先頭部には違った魅力が詰まっていました。
バリアフリーの問題さえクリアすれば、現代でも通用しそうな構造のようにも思いますが、再びこのスタイルのロマンスカーが登場するようなことはあるのでしょうか。