2025年度の鉄道事業設備投資計画が話題になった裏で、小田急は2026年度にかけての中期経営計画も発表しています。
そのお知らせを読み進めていくと、観光需要の取り込みが重点施策に据えられており、日常の輸送を重視していた方向性に変化があることを予感させました。

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2028年度には新型ロマンスカーの就役が予定されていますが、小田急はどういった方向性を目指していくのでしょうか。

必然ともいえる観光輸送への回帰

小田急に限ったことではありませんが、コロナ禍を経て鉄道を取り巻く環境は大きく変化しました。
どちらかといえば、鉄道にとってはネガティブなものであり、定期客を中心に以前の水準には戻っていません。

通勤需要が減少し、今後は少子高齢化が一層進むことを踏まえると、利用客が減少することは避けられないといえます。
しかし、小田急は箱根や湘南といった観光地を沿線に抱えているため、そういった面では恵まれているともいえるでしょう。

戦後の高度経済成長期に沿線人口が急増した小田急は、通勤客等の増加により輸送力の増強に追われました。
1990年代には、ロマンスカーも観光から日常利用を中心とした体制にシフトし、車両の陣容もそれに合わせたものとなっています。

日常的に小田急を使う人が減っていくとなれば、原点に回帰して観光輸送を強化するのは当然の着地ではあります。
昔と異なるのは、インバウンドという要素が強く作用することであり、国全体でそこに頼って行かざるを得ない中、小田急がどこまで需要を取り込めるのかという点でしょう。

海外から訪れた方々に選ばれるよう、観光地の魅力を今以上に高め、便利で選ばれる輸送手段を提供する、そういった対応が今後は求められることになります。
ただ用意するだけではなく、海外の方々に届ける努力も必要ですから、様々な面での企業活動が必要になりそうです。

長期的には大胆な取り組みも必要か

鉄道という輸送手段に限れば、箱根への輸送は小田急の独壇場であり、かなり有利な状態にあるといえます。
一方で、ゴールは強い状態ながら、スタートは基本的に新宿しかないため、インバウンドという面では不利な要素の一つでしょう。

空港に到着した海外の方々は、何らかの手段を利用して新宿まで来なくてはならず、スタート地点に立ってもらうというハードルがあります。
そのハードルを越えるだけの価値を提供する必要があり、そういった面でも観光特化型のロマンスカーに求められる期待は大きくなりそうです。

空港や新幹線から、どうやって小田急の新宿駅に外国の方々を連れてくるのか、今以上に需要を取り込もうと考えた場合には、避けて通れない問題です。
観光輸送に詳しいわけではないので、あまり適当なことは言えませんが、空港から小田原まで線路が繋がっているJR東日本は、やはり強いのだろうなと思います。

空港からロマンスカーが他社線を走り、最終的に箱根湯本駅まで到着できるとよいのでしょうが、さすがに夢物語でしょう。
そうなれば、どうやって新宿駅に来てもらうか、徹底的にその点を追求する必要があることになり、外国人にとって魅力的な要素をロマンスカーに盛り込む必要もありそうです。
新宿駅への移動手段も、他社に頼るだけではなく、小田急自らで利便性が高く魅力的なものを用意する、そういった大胆な方向性も必要なのかもしれません。

おわりに

時間はかかりそうですが、ロマンスカーの方向性にも今後は変化がありそうだと感じています。
選ばれるだけの魅力は必須となりそうですから、新型車両の登場には期待が高まりますね。