形式によって明暗が分かれがちで、短命に終わってしまう車両も多い小田急のロマンスカー。
強い個性を打ち出した車両ほど、その後の時代の流れに翻弄されてしまう面もあるように思います。

シリーズ化している時代に翻弄されたロマンスカーですが、今回は7000形(LSE)を取り上げることにしました。
長く活躍したLSEですが、どういった面で翻弄されたのでしょうか。

脇役の時期が長かったLSE

17年ぶりの新型ロマンスカーとして、1980年にLSEが登場しました。
基本的な構成は3100形(NSE)に準じていますが、17年の歳月を経て変化した路線の状況に合わせ、従来は高速性能寄りだった設計を見直しています。

ロマンスカーにおいて、久し振りの新型車両となったLSEは、早速大注目の存在となりました。
元々は3000形(SE)の置き換えを行い、国鉄の御殿場線に乗り入れることも想定されており、短い両数の編成を造る構想もありましたが、結果的には実現せずに終わっています。
後になってみれば、優等生といえるようなバランスのよい車両に仕上がりましたが、登場前の時点で時代に翻弄されていたともいえそうです。

NSEと力を合わせ、箱根への観光輸送を中心に活躍していたLSEでしたが、最新型だった期間はそこまで長くありません。
1987年には、ハイデッカーを採用した10000形(HiSE)が登場し、カラーリングが大胆に変更されたこともあってか、早くも脇役となってしまいました。
続く1991年には、20000形(RSE)がSEの置き換え用としてデビューを飾り、従来のカラーリングであるNSEとLSEは、古いロマンスカーとして乗客の目に映ることとなります。

必要悪で生じた長年の活躍

NSEの置き換え用として、ロマンスカーの常識を大きく変えた30000形(EXE)が1996年に登場すると、歩調を合わせてLSEにも動きがありました。
それはカラーリングの変更を伴うリニューアルであり、HiSEに準じた姿へと変わっていくこととなります。

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カラーリングを変更した背景には、NSEの引退後にイメージの統一を図る狙いがあり、分割併合が可能なEXE、御殿場線に乗り入れるRSE、前面展望席があるLSEとHiSE、このように整理されました。
NSEの発展形というイメージが強かったLSEは、HiSEの仲間という枠組みに整理されたことになります。

リニューアルにより位置付けが変わったLSEでしたが、その際の方向性も長くは続かず、時代はHiSEとRSEを早期引退に追い込んでいきました。
自慢のハイデッカーはバリアフリー化と相性が悪く、LSEよりも先に廃車される運命が待っていたのです。
インパクトが強い2形式の登場により、あっという間に脇役となったLSEでしたが、皮肉にもバランスがよい設計が後年になってプラスに作用しました。

HiSEとRSEが引退していく流れの中、小田急の開業80周年等を記念して、LSEの1編成が旧塗装へと戻されます。
元々は期間限定の予定でしたが、その後も旧塗装の状態は維持されていくこととなります。
そして、2012年にHiSEとRSEが引退するタイミングにおいて、残っていた2編成が揃って旧塗装とされ、LSEは結局元の姿に戻されました。

旧塗装に統一された意図は不明ですが、2012年の時点でLSEはデビューから30年以上が経過している状況でした。
HiSEとRSEが抜けたことで、他のロマンスカーよりも極端に古い車両となってしまったため、それを逆手に取った対応だったともいえそうです。
そんなLSEも2018年に引退となり、SEからの流れを汲んだ車両の歴史に終止符が打たれました。

おわりに

40年に迫るほどの活躍となったLSEですが、リニューアル後に使われた年数のほうが長いという結果になっています。
後輩のロマンスカーが早期に引退したことで、廃車の時期が想定よりも後ろに倒れたことを物語るエピソードです。