コロナ禍以前の水準には戻っていないものの、着実に利用者は増加傾向となっている小田急。
テレワーク等は多少なりとも定着した面があるため、沿線人口の母数を増やしつつ、観光需要の掘り起こしを図っているものと思われます。

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そんな中、2024年度の乗降人員等に関する実績データが公開されたため、2023年度との変化を中心に確認してみたいと思います。

2024年度の乗降人員はどう変化したのか

2023年度の乗降人員は、コロナ禍の減少に対する反動が色濃く出ていました。
人の移動がほぼ戻った状態でスタートした2024年度は、反動という要素が弱くなると想定されますが、どのような変化を見せるのでしょうか。

早速ですが、2023年度と2024年度の乗降人員を比較し、変化を観察してみたいと思います。
以下は1日平均駅別乗降人員について、2023年度から2024年度への増減を実数値とし、多い順に並べたものです。

代々木上原:+12,058
新宿:+11,112
登戸:+5,881
町田:+4,150
本厚木:+3,872
海老名:+3,540
藤沢:+3,137
経堂:+2,927
下北沢:+2,653
向ヶ丘遊園:+2,438
成城学園前:+2,368
小田急多摩センター:+2,200
相模大野:+2,169
新百合ヶ丘:+1,865
祖師ヶ谷大蔵:+1,684
千歳船橋:+1,658
湘南台:+1,657
生田:+1,578
大和:+1,464
豪徳寺:+1,329
狛江:+1,285
小田原:+1,146
中央林間:+1,127
梅ヶ丘:+1,110
愛甲石田:+1,062
小田急相模原:+1,033
東海大学前:+1,006
鶴間:+872
善行:+812
読売ランド前:+731
柿生:+707
伊勢原:+689
厚木:+629
喜多見:+582
本鵠沼:+550
参宮橋:+548
鶴川:+522
高座渋谷:+481
黒川:+438
東北沢:+431
開成:+429
玉川学園前:+408
長後:+404
小田急永山:+393
新松田:+387
百合ヶ丘:+381
相武台前:+365
東林間:+354
唐木田:+352
和泉多摩川:+345
片瀬江ノ島:+337
鵠沼海岸:+336
代々木八幡:+330
藤沢本町:+297
はるひ野:+295
五月台:+283
富水:+261
秦野:+253
座間:+239
桜ヶ丘:+231
鶴巻温泉:+220
栗平:+217
六会日大前:+209
南林間:+208
渋沢:+162
南新宿:+51
螢田:+42
世田谷代田:+39
栢山:-7
足柄:-10

結果はこのようになりました。
昨年のデータと見比べると、やはり数値の変動幅は小さくなっています。



変動幅こそ小さくなってきてはいるものの、2024年度もほぼ全ての駅で利用者が増加している状況であり、反動の要素と企業努力の両軸が寄与しているような印象を受けました。
一方で、駅によって明暗は分かれているようにも感じるため、そのあたりは興味深いところです。

数値の変動が気になる駅

ここからは数値の変動が気になった駅について、個別にピックアップしていきたいと思います。

増加数の1位は代々木上原で、昨年が新宿であったのとは変わりました。
全体で2位という状況も代々木上原は同様で、3位に後退した町田は引き続き背中を追いかけていますが、差は開いている状態です。
小田急の城下町といえる海老名は、昨年と比べて増加数が落ち着いてきており、何を意味するのでしょうか。

神奈川県の端である登戸と向ヶ丘遊園が比較的強く、多摩川を渡ると家賃が下がるというような、そんな影響が出ているようにも感じます。
喜多見や和泉多摩川はあまり増加しておらず、狛江が多少強いことも踏まえると、優等列車が停まる駅は強いという印象も受けました。
上位は主要駅が占めているという点でも、やはり優等列車の停車は影響が大きそうです。

都心部寄りへの回帰傾向も鮮明で、世田谷区の強さが際立ちます。
千歳船橋、祖師ヶ谷大蔵の両駅が上位に入っており、これは準急停車駅のメリットでしょうか。

下位は誤差に近い変動となってきますが、全体的に古くから発展していた駅が多いように思います。
その傾向が顕著なのは、相模原市から座間市にかけての各駅で、今後は何らかの対策が必要にも感じました。

興味深いのは世田谷代田で、Silentというドラマの聖地として上昇した反動が出てきています。
その他にも、愛甲石田や渋沢は伸びの鈍化が顕著でした。

2023年度は足柄のみが減少した駅でしたが、2024年度は栢山がこれに加わりました。
全体的に伸びは鈍化しており、2025年度は減少に転じる駅が増えそうです。

おわりに

明もあれば暗もある、2024年度はそんな結果になったように思います。
都心回帰の傾向もある中、子育て世代を中心に郊外エリアの需要も高いため、小田急はより一層後者の獲得を狙っていくことになるのでしょうね。