小田急の路線としては最も短く、新百合ヶ丘駅から唐木田駅までを結ぶ多摩線。
近年は日中の運行本数が減った一方で、小田原線と直通運転を行う列車が増えており、路線全体としての利便性はよくなる傾向にあります。

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1日あたりの運行本数は減少傾向の多摩線ですが、実際の利用状況はどのように変化しているのでしょうか。
コロナ禍前である2019年度と2024年度の乗降人員を比較し、多摩線内で何が起きているのかを読み取ってみたいと思います。

各駅における2019年度と2024年度の利用状況比較

人々の生活スタイルを変化させたコロナ禍は、少しずつ遠い日のできごととなりつつあります。
出社回帰の傾向はあり、会社によってスタンスは異なりますが、全体で見た場合には通勤需要が低下したことは間違いなく、コロナ禍を挟んで人々の移動に対する考え方は大きく変化しました。

小田急も利用状況が以前の状態にまでは戻っておらず、様々な策を打ち出している状況ですが、定期客の減少によるインパクトは相当なもののようです。
今回のテーマである多摩線についても同様で、基本的には利用者が以前よりも減った状態となっており、元には戻っていません。

以下は駅別の1日平均乗降人員について、2019年度と2024年度を比較したもので、括弧内には増減率を記載しました。

五月台:-504人(95.1%)
栗平:-1,863人(92.4%)
黒川:+342人(103.9%)
はるひ野:-285人(97.2%)
小田急永山:-3,844人(87.6%)
小田急多摩センター:-4,962人(90.3%)
唐木田:-2,891人(83.2%)
全体:-14,007人(90.9%)

駅によって差はあるものの、全体としては減少している状況で、定期客の減少分と近い9割という数字を示していました。
唯一の例外は黒川駅で、コロナ禍前を上回る利用状況となっています。

神奈川県と東京都の駅における明確な差

全体の利用者が減っている中で、日中を中心とした運行本数を削減し、優等列車による通過運転をやめることは合理的なように思います。
一方で、多摩線の奧から利用する方々にとっては、若干ながら所要時間の増加に繋がる面もあるため、利用する駅によって評価は分かれるでしょう。

このような状況下で、小田急は多摩線の全駅を急行停車駅にすることに踏み切りました。
合理化のほうに目が向きますが、小田急には他の狙いもあるものと思われます。

以下は先ほどと同じ条件で、神奈川県と東京都の駅で合算して増減をまとめたものです。

神奈川県:-2,310人(95.7%)
東京都:-11,697人(88.3%)

傾向には大きな違いがあり、多摩ニュータウン内にある東京都の各駅のほうが、減少の度合いとしては大きくなっています。
学生の減少という要素もありますが、思っていた以上に差は大きいといえそうです。

特定の時期に開発が進められた多摩ニュータウンでは、急速に高齢化が進んでいます。
小田急の駅があるエリアは、比較的初期に入居が開始されたこともあり、高齢化率の面でも先行しているそうです。

そんな厳しい条件の中で、小田急が沿線開発に関与しやすいのがどちらかといえば、神奈川県内の各駅ということになります。
かつては4駅中の3駅が急行通過駅でしたが、その全駅を停車とすることで、沿線価値を高めようとしている狙いが読み取れます。
列車の本数を減らしつつ、周辺人口の増加を図りたい駅の利便性を高める、そんな意図が利用動向からは感じられました。

おわりに

多摩ニュータウン内とそれ以外の駅で傾向が異なり、神奈川県内の各駅を発展させる意図が感じられた多摩線。
急行以外の停車駅が今後どうなるのかも気になるところですが、それについてはまたの機会に書きたいと思います。