2019年度に導入が開始され、現在は140両が在籍する小田急の5000形。
老朽化した8000形や1000形の置き換えを進めてきており、2025年度にも10両が導入される予定です。

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拡幅車体を復活させ、以前のスタイルに近くなった5000形ですが、車体は他社で見られない珍しいものとなっています。

3社で共同設計された5000形

伝統的にと表現するべきか、慣例というべきか悩ましいところですが、小田急の車両は長らく3社の製造メーカーで造られてきました。
近年はロマンスカーが日本車輌製造に一本化されていますが、通勤型車両においては変わらず3社に任されており、変わることなく続いています。

5000形についても、川崎車両、総合車両製作所、日本車輌製造の3社で造られていますが、製造メーカーに由来する差異はほとんどありません。
これらの3社は、5000形の設計自体も共同で行っており、小田急ならではの特徴的な車両に仕上がりました。

3000形で垂直車体に回帰し、2600形以来の拡幅車体から離れた小田急でしたが、混雑時の圧迫感は従来車より増してしまいました。
利用者の声としてもあがっていたのか、5000形では2000形以来の復活となり、ふっくらした裾を絞ったスタイルとなっています。

各社の技術を組み合わせた珍しい車体

拡幅車体が復活し、昔ながらのスタイルに戻ったように感じる5000形ですが、側面は3000形に似ています。
似ていると感じるのは当然で、どちらも日本車輌製造の日車式ブロック工法を採用しているため、外見にその特徴が色濃く出ているのです。

日車式ブロック工法は、側構体をいくつかのブロックに分けて製造し、それを最後に溶接して組み立てるという方式で、工期の短縮やコストダウンを可能としました。
ドアの周囲が屋根まで一体化しており、それが外見上で最大の特徴となっています。

外見からは、3000形の車体を広げただけに見えなくもない5000形ですが、実際にはそう単純な車両ではありません。
純粋な日車式ブロック工法ではなく、レーザー溶接の技術は川崎車両のefACEから、妻面のオフセット衝突対策には、総合車両製作所からsustinaの技術が取り入れられ、各社の技術を組み合わせた車体となっています。

車両の標準化が進んだ現代において、このような設計が採用されることは比較的珍しく、見た目以上に面白い車体ということになります。
少々欲張りな設計にも感じますが、それだけ5000形は力の入った車両ということなのかもしれません。

おわりに

経営環境の変化により、当初の想定より5000形を増備するペースは落ちているものと思われます。
いつまで増備が続くのかが気になりますが、次に登場する新形式の車体は、どのような仕様になるのでしょうか。