リニューアルの対象外とされ、2022年に最後の編成が引退した小田急1000形のワイドドア車。
幅が2mもある大きなドアが特徴でしたが、改造により開口幅は1.6mに変更されていました。

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ラッシュ時の乗降をスムーズにするために採用されたワイドドアですが、乗客の滞留が発生して効果は限定的だったといわれます。
いったいどのようなことが起きていたのか、乗客の心理面を中心に考えてみたいと思います。

課題だったラッシュ時の停車時間

ワイドドア車が登場した当時、朝のラッシュ時は平行ダイヤで運行されていました。
複線の小田急において、1時間に29本を走らせるのは線路容量のうえで限界であり、優等列車も各駅停車を追い抜かずに新宿駅を目指すこととなります。

1991年に登場したワイドドア車は、朝のラッシュ時における準急等に投入されました。
デビュー当初は、10両編成の全てがワイドドア車という攻めた組成もありましたが、試験的な要素もあったものと思われます。

小田急がワイドドア車の投入に至った背景には、ラッシュ時における停車時間増大の問題がありました。
乗客が多いラッシュ時は、どうしても各駅での乗降時間が増大します。
そこで、ドアの幅を広げることで同時に乗降できる乗客の数を増やし、停車時間を10秒程度短縮することを目指したのがワイドドア車です。

たったの10秒というと、たいした影響はないように思われますが、これが全ての駅で実現できた場合、6駅で1分の短縮になります。
それぐらい当時のダイヤはひっ迫しており、停車時間の短縮により列車の本数を増やしたいと考えていたようです。

想定どおりには動かない乗客

早い段階で運用が変化し、後に開口幅を縮小した経緯からも分かるとおり、ワイドドア車による試みは成功しませんでした。
2mという幅は、大人が5人同時に乗り降りできるもので、実験等を通じて効果を確認していたようですが、どうも期待した結果にはならなかったようです。

よく聞くのが、ドア付近に乗客が滞留し、乗降時間の短縮効果がなかったというものです。
かえって停車時間が長くなったともいわれますが、真偽は確認できていません。

激しい混雑のラッシュ時においては、暗黙のルールやマナーが存在します。
新年度になると、ラッシュ時の遅延は多くなる傾向がありますが、これは不慣れな利用者が増えるためといわれます。
ワイドドア車において、理論上の動きとは異なる結果が生じたのは、利用者の心理が影響したと考えました。

ラッシュ時といっても、全ての乗客が都心部を目指しているわけではありません。
小田急においては、登戸駅や下北沢駅において、南武線や井の頭線との乗り換えもあるため、途中駅での乗降は意外と多いのです。

当然のことながら、途中駅で降車する乗客においては、車両の奧に入りたくないという心理が生じます。
また、長く乗る場合はできる限り途中駅で外に出たくはないものですが、ワイドドア車は開口部が広いため、とどまりやすかったと考えられます。
人が無理にとどまろうとした場合、通常は人の流れによって押し出されてしまいますが、ワイドドア車は避けて乗降すればいいため、結局最大の開口幅にはなりにくかったものと思われます。

外に出たくない心理としては、せっかく得た立ち位置を失いたくないといった考えのほか、積み残されるというリスクを回避したいという思いもあるでしょう。
つまり、外に出たとしてもできるだけドア付近で止まりたくなり、流れるように列の後ろに向かう人ばかりではないのです。
奧に入りたくても、通路自体が短いという要素が加わり、全体的なバランスも崩れていました。

長年に渡って築かれてきた乗客の動きは、いきなり現れた幅の広いドアに適応できなかったのかもしれません。
運用自体は決まっていましたが、車両によってドアの幅が違うという状況も、乗客にとってはややこしかったのではないでしょうか。

おわりに

期待した効果を発揮できず、後に開口幅を縮めることになったワイドドア車。
限定された車両ではなく、多数派がワイドドア車であった場合には、乗客の慣れによる違った効果があったのではないか、そんな点も気になりました。